太閤立志の人々

□太閤立志伝〜藤原湛増編〜
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■新婚生活■


 いつも可愛い愛花を抱き締めて寝ているのに、朝起きると腕の中にはいなくて…美味しい味噌のにおいがただよう。

「おはようお前さま」
「おはよう」

 まだ寝ぼけている俺に微笑みながら朝餉をもってくる。

 その朝餉がとてもおいしくて…

 ああ、幸せな新婚生活……と思いきやなにかのやっかみか!

 頭領が敵対水軍へ戦を仕掛けると言い出し俺をかり出した。
 なぜならば、功労賞で水夫頭の位をもらったからだ。

 ああ…愛花にあえぬままそのまま戦にかりだされるだなんてぇぇ……!

 その怒りの闘志を敵水軍にぶつけて奮闘。

 功績2位をおさめて凱旋すると愛花が俺のために祝ってくれた。


 やはり、持つべき者は、妻である。

 新婚生活はたのしい。

 家にかえれば甲斐甲斐しく御飯を作ってくれるし、いちゃいちゃできるし……。

 ある主命で海賊の本分『海路を破壊する』ことに成功した。
 けれど現地解散なので、どうせだから遠いところで妻に土産をかっていこうとした時だ。

 なぜか、妻がいたのだ!

 買い物ついでところではない、ここは猪苗代なのだから!

「あ、愛花なぜこんなところに!」
「あらだんな様奇遇ですわね!」
「奇遇ではなかろう! もし賊にでも襲われたらどうするのだ!」
「だいじょうぶですわ、人の多いところをとおっていますからv」
「そう言う問題では…」
「ふふ、心配して下さるの、おまえさま?」
「あたりまえじゃ!」
 俺は叱って彼女を抱き締めた。
「そなたにもしものことがあったら…」
「ふふ、愛花はこんなにだんな様に思われているなんて幸せものですわ」
 しばらく人目をわすれて道中でだきあっていた。
「そうですわ、荷物が一杯で一人ではもちきれなかったのです」
「なに? 野菜でもかったのか?」
「いいえ、これです!」
「こ、これは……」
 俺は冷や汗をかいた。

 彼女が買ったのは鎌(武器)と鉄砲だったからだ。

「あは…これじゃあお前を襲おうとする賊のほうが哀れだな…」
 大湊では『強弓使いの愛花』として有名だった。



 そして疲れてかえってくると妻が見知らぬ男にいいよられていた!
「奥様私の気持ちを!」
「けっこうですってば!」

 もしやわが愛妻にいいよるふとどきものか!!!

 俺はカッとなってその男をのそうとした……が。
「なにをなさるのですか! だんな様!」
 え?
「この方は、私が助けた方で、せめてものお礼だっていってお金を渡そうとするから断っていただけなんです!」

「え?」

 その妻に言い寄った男…もとい妻に命をすくわれた男は冷や汗をふきふきにがわらった。

「いやぁ……話がややっこしくなったときだったから仕方がなかったです」

 結局つまは金を受け取らず男をかえした。

「ふふ、お前様がわたしが言い寄られていると思ってあんなに取り乱してくれるなんて、愛花は嬉しゅうございます」
「お、俺は別に…別に冷静だった、ぞ?」
「ふふふ、」



「あら。蛇だわ」
「蛇!」
 愛花はおれの驚きなどよそに蛇を捕まえた。
「咬まれるぞ!」
「大丈夫ですわ、こうやって首をおさえていますし、毒はない種類でございます…首…ねえ。お前様蛇のくびってどこからどこまででしょうね?」
「そんな疑問にはあとでつきやってやるから早く捨てなさい!」
「もう、せっかちですわね〜」
ポイッと玄関に投げ捨てた。
 ホッとむねをなぜおろしと、外から悲鳴が。
「あら、外に人がいたらしいですわね。ま。毒はないから平気ね!」
「……」



「ねえ。おまえさま…愛花はお前様と一緒に慣れてうれしゅうございます…」
「ふふ…なにか言わせたいのだろうが、いわぬ」
「よろしいのですわ、わかってますから」

 そんなこんなで楽しい夫婦生活です。

 
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