短編

□私の、大事な、人
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マフラーを付けて、黒のブーツを履いて、傘を手に持つ。


そんな当たり前の事でも、今は憂鬱。



「銀ちゃーん、行ってきますヨ」


「おぅ」



どこと無く沈んだ銀ちゃんを気にしながら、私は玄関から出る。



別に、今日はどこか決まった所を行くつもりはない。


定春の散歩なら、もう済ませた。



そのままごく日常の事をすれば良いのだが、その日常の中に、あいつとの鉢合わせが今日はなかったから。


そのまま無視しても良いのだけど、どうしても私の頭はそれが出来なくて。



「どっかぶらぶらしとけば、絶対あいつに会えるだろうネ」



そう決断して、今にいたる。



伝えなくちゃ、いけないことがあるから。



どうしても。



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