短編
□3歩の距離
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「ふぅ・・・」
ネオンの光に包まれた通りをけだる気に歩く私。
周りの建物は怪しい店ばかりで、その辺りをうろつく男女も怪しい人達で一杯で。
私はろくに見渡さずに前方だけを見て、早歩きで家へと通じる道を通る。
これはもう日常の事。
私がスナックで働きだしてからの。
そして、
「ねぇねぇそこの可愛いお姉さん」
ガシッ
こんな風に知らない男に話し掛けられるのも日常の事。
私は慣れた風にお得意の作り笑いで「何でしょう?」と問う。
「お姉さん、1人で寂しくない?俺達イケメン男子が慰めてあげるよ?」
馬鹿みたいな嫌らしい笑みのその男に内心「どこがイケメンじゃこの糞ガキが」と悪態を付き、男に見えないところで握りこぶしを作る。
「私は寂しくなんかないわ。離して下さい、家に帰りたいの」
「そうとは言わずにさぁ」と中々腕を離してくれない男に顔面パンチを喰らわせる為足を半歩広げる。
こういうのも日常の事。
毎日変な男共に蹴りやパンチを入れ、そして逃げる。
でも今日は、そんな何時もの様にはいかなかった。
ある男によって−・・・。
「ちょーっとそこのお兄さん?」
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