氷か太陽か(Novel)
□第1話
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「カイ!何処だ?ちょっと来てくれ!!!!」
威勢の良い声が団員宿舎に響き渡る。
ここはホルスト騎士団3番隊の宿舎。3番隊の者の5分の4は此処に入っている。
「はい!今行きますって!!」
“またか”と思いながら隊長である、さっきの威勢の良い声の主のバージスの元へ急ぐ。
カイは自分から人と関わることはまずない。だがバージスはカイにとって命の恩人と言っても過言ではないため、無視することは出来ない。
「何ですか?…まさか、“隊長ベルトは何処だ”とか“次の隊長会議はいつだ”とか言いませんよね…?」
「……」
黙り込むバージス。カイは自分の冗談が当たったことに驚いた。
「…どっちですか」
「…………両方…」
本当にこの人が隊長でいいのだろうか。情けない。
「ベルトは僕が持ってますよ。…隊長が“持っていてくれ”って仰ったので。隊長会議は明日の午後7時に1番隊隊長の部屋です」
「なるほど!ナイスだ、カイ!!」
「……そんな事を言うより、忘れないようにしてもらえると嬉しいのですが」
嫌味を返してやる。
「あー、無理だなっ♪俺、もう許容範囲オーバーしてるし」
呆れてものが言えないとは正にこの事だろう。
バージスに騎士団流の敬礼をして“失礼します”と言って逃げた。