おはなし 3

□おとうさんと一緒!
1ページ/1ページ

仕事が早く終わった日は俺自身が迎えに行く

桜が散る氷帝学園附属幼等部の門をくぐり抜け、俺の可愛い愛娘が待つ校舎に向かって歩く

俺の姿を見つけた園長が慌てて歩いて来た
俺は眉間に皺を寄せた

「…」
「何だ」
「あの…お嬢様が転けて膝を擦りむいてしまいまして…」

正直、鬱陶しい。
転ければ擦りむくのは当たり前だ。
それをわざわざ『跡部』だからと、園長が俺に言いに来なくてもいい!
毎度の事ながら邪魔くさい……

俺があからさまな顔で園長を見ていると建物の中から賑やかな声が近づいてきた
2つの喋り声の1つが娘の声だと気付き目線をそちらに移し園長の横を素通りする

建物からは黒い髪が肩まである線の細い男が娘を抱いて歩いてきた
俺が男から目を離せずにいると…
娘が俺を見つけ笑う
俺も娘に笑みを返す
まだ隣では園長が何かを言っているっと保育士の男が娘と喋り出した

「もう痛くないもんなぁ」
「うん!全然痛くないよ」

保育士と娘が顔を見合わせ笑う
綺麗な綺麗な笑い顔…

娘が俺に手を出す
娘を抱くために保育士に近寄る
娘が保育士から俺へと移動した
娘を片手で抱き空いた、もう片方の腕を保育士の背に回す。保育士の右耳に唇を寄せた

「俺の処に来ないか?」
耳をくすぐる様に甘く囁いた声に保育士は顔を真っ赤にして戦慄き声なき声で叫び、周囲からは絶叫が響いた…

これが俺と彼の出会い




2007/11/19

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ