04/20の日記

21:32
第7戦
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勢い良く扉が閉められた
その、余りにも大きな音に部屋に居た人間の視線が集まった
入ってきた宍戸は構わずに首から掛けていたタオルで滴る汗を拭い、空いている近くのソファーに無造作に腰を下ろした
「…宍戸」
芥川にしては珍しく、うかがう様に小さく声を掛けたが、タオルで顔を隠した宍戸からの返事は無かった
部屋には嫌な空気が流れていた
そこに今まで姿の見えなかった鳳が宍戸の側へと歩いていった
「宍戸さん」
心配そうな声で宍戸に話し掛ける
そっと、宍戸へとスポーツドリンクを差し出す
ひんやりとした冷気に宍戸がタオルを顔から外し、隣に立つ鳳を見上げた
宍戸は鳳から受け取り、キャップを回して仰ぐ様に飲んだ
カラカラに乾いた喉を潤した
一息付いた宍戸は飲み干して空になったボトルを机の上に置いて、立ち上がった
「宍戸さん」
宍戸は地下のジムへと歩いていった
その後を追って、鳳が階段を下りていった

「宍戸…」
芥川の心配そうな声
起きているよりも、寝ている時間の方が長い芥川の生活が最近は逆転している
それは、幼馴染を心配しているから
そして、あの日から……あの完璧な敗北を規してから
あれ以来、皆、己を鍛えている
しかし、異常なほどまでに自分を追い込みトレーニングを宍戸はしている

「ほっとけよ!慈郎」
「岳人は宍戸が心配じゃないの!!」
向日は机の上に置かれたボトルを持って、芥川を振り返った
「そんな訳ないだろ」
「じゃあ」
芥川は抱きしめたクッションを握り締めて、ソファーから身を乗り出した
「宍戸だぜ?慈郎も解ってんだろ」
「……」
「宍戸は自分が納得するまで止めない」
「……」
「妥協しない」
「……ぅん」
芥川も解ってはいる
でも、心配で堪らない
芥川は眉根を寄せて、クッションに顔を埋めた
向日はハニーイエローの柔らかい髪をぐしゃぐしゃ、っと撫でた
「俺達だけでも、何も言わずに見ててやろうぜ?」
芥川の頭が小さく上下に動いた

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