スポーツカーとスポーティーカー。似て非なるものだ。明確な定義があるわけではないが、スポーツカーとは何よりも「走る」事を第一義に開発された車であると言える。この「走る」とは何も飛ばす事に限定されない。気持ち良くドライブする事だ。この「走る」為だけに多くの事を捨てる、言い換えれば犠牲にして作られた車のみがスポーツカーと呼ばれる資格がある。その意味で、ある評論家はこう言った。「世の中の自動車はスポーツカーとそれ以外に分類される」と。まさにその通りである。この点ではいくら速くてもランエボやインプレッサSTIシビックやインテグラのTYPE−R、ひいてはGTRでさえスポーツカーではない。(もっとも今回のGTRはスポーツカーと呼んでもいいと思うが)これらの車はベースとなるセダンやファミリーカーを改造したもので、最初からスポーツカーとして設計された車ではない。具体的には4〜5人分の座席数と室内高と室内長を用意し、ゴルフバッグも入る十分な荷室を作った時点でもはや走りの為の設計ではなくなってしまっている。言い切ってしまえば2シーター以外はスポーツカーではない。ではRX8と新型GTRは?前者は設計段階からロータリーエンジンの専用スポーツカーとして作られているのだが、上層部から製造許可を得る為に販売台数を稼ぐ必要があり無理矢理に4座にした。しかしスポーツカーとして許される最低限の後席にし、かつミニマムのリヤドアから出入りさせるため観音開きのリヤドアを開発した。結果ディメンションは2シーターと変わらないレベルになっているのでスポーツカーと考えて良かろう。GTRはよりスポーツカーから遠いと言わざるをえない。ベースは日産がどう弁明しようがスカイラインクーペだ。ただ手の入れ方が尋常ではなくエンジン、ミッション、サスペンション、ブレーキ、素材その他すべて別物であり、事実妥協点はほとんどない。従ってスポーツカーと呼んでも差し障りはないと思う。一方、軽自動車のビートとカプチーノも専用設計だから、例え遅くとも純粋なスポーツカーである。もう一車種のコペン。かなりの評論家やドライバーはFFはスポーツカーではないと言う。彼らの論拠は駆動輪と操舵輪は別でないといけないと言うものだ。それならば四駆はどうなのだ。彼らはランボルギーニのガヤルドやムルシェラゴもスポーツカーではないと言う勇気があるのか。要はリヤスライドをカウンターとアクセリングでコントロールするという前時代的なスポーツ走行感を持っているのではないか。FFでも、いやFFの方がタイヤのグリップ状態の正確な把握とそれに応じたアクセリングが要求されるのだ。でないとFFは曲がらない。以上からスペースと排気量の厳しい制約の中、スポーツカーを作るという血の滲むような努力を尽くしたコペンは紛れも無いスポーツカーだ。

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