少し古びた青い本

□出会ったのは偶然か
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 数分後、転がった骨を山へと蹴飛ばして二人して同時にため息をつく。
倒しても一匹、また一匹と増えた死者の骨はやっと近くにいなくなり、カラカラという音も聞こえず、どこかから聞こえる蝙蝠の鳴き声だけとなった。
この様子だと再び囲まれることにもなりそうで。
「いやー、本当に助かったよ、ありがとー」
壁にもたれてぺたりと座り込んでいた剣士が、やっと落ち着いたのか顔を上げて礼を言う。
今度は先ほどと逆で香西が驚く番だった。
青い髪のポニーテール、どこか気の抜けた顔をしているが…似ている。
昔に亡くした父親と、微かに自分にも。
剣士はと言えば、だまったアコライトを不思議そうに見つめるだけで。
「そろそろ行けるかなと思ったんだけどね、まだ無理みたいだ。」
沈黙に機嫌を損ねたと思ったのか、剣士は苦笑しながら立ち上がった。
ぱたぱたと服をはたき、短剣を鞘へと納める。
「…あ、うん…って、無理だと思ったんならさっさと逃げたほうがいいよ?」
我に戻って気になったことを尋ねてみると、冒険者とは思えない返事が返ってきた。
「忘れちゃってさー」
「…は?」
何のことはない、行けるかと思って二階まで降りてきた。
が、どうやら装備は短剣…強化はしてあるようなものの、特化でも属性でもないスティレット。
こちらを気にして逃げない、のではなく、ただ単に逃げる手段が無かっただけ。
何か頭痛を感じて頭を抱えれば心配そうに覗かれる。
瞳が青い。
「ごめん、迷惑かけちゃったよね」
「…名前は?」
予感がした。
似すぎている…いや、それ以上に間抜けだが。
この様子だと一度や二度のことじゃないだろう。
それを確認したくて一つだけ尋ねた。
「オレ? カサイだけど…」
あぁ、やっぱり…と思わず笑ってしまう。
「ははっ、…まぢで?」
「まぢで」
何がおかしいのか分からないのか、怪訝そうにこちらを見ている。
ずっと前の記憶を辿っても、彼には何のことかは分からないのだろう。
「まぁいいや。プロンテラまでのポタ出すから、大人しく帰りな?」
言うが早いか、その足元に魔方陣が現れる。
これ以上話していたら余計なことまで言いそうな気がして、強制的に帰すことにした。
「え、ちょ…アコさんの名前は…っ?」
「…ひみつー」
聞こえたか分からないが、剣士の姿は光と共にその場から消えた。
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