想い

□心の中と現実@
2ページ/33ページ

【そら】

現実は、惨くて暗い世界だと思う。

でも、今日の空は違ったんだ。
ここは本当に現実の世界なの?
そう思ってしまうほどに、きれいな空だったんだ。
青空に浮かぶ真っ白な雲、眩しく射しこむ陽光、ありそうで無い光景だと思った。安らかで、とても優しい眺めだった。

雲の流れは速かった。
遥か彼方の真っ白な雲が風に乗って流れてゆく。まるで時の流れのように、ゆったりと、でも止まらずに。

目が回りそうだった。
空が回っているように見えて、くらくらした。足元がふらついて落ち着かない。
自分という存在がぐらついてきた。

どうして此処にいるのだろう?
そう思った。

自分が分からなくなって、頭が働かなくなった。

自分が2人居る感覚。
物理的な自分は、目を動かし、手すりに寄り掛かり、ただ、世界を見てる。
その目を通して、心の奥の自分が、世界を睨み、見下している。
くだらない、こんな世界。ふざけやがって。
そんな汚い感情が渦巻いていた。
物理的な私は、ただ笑う。笑うことしか知らないみたいに。
泣くこともなく、怒ることもなく、本気で笑うこともなく、ただ、笑顔で居た。
泣けるのは、奥に居る自分。表面には現れない。

空はだんだん暗くなり、やがて夜が来るだろう。
幻想的な空に、惑わされることはなくなり、星空が見えるようになる。

そうしたら、現実が見えてくる。
現実の、暗くて静かで、微動だにせず、ただ広がる宇宙の闇が、世界を包んでくれるだろう。

さあ、眠る時間だ。
闇に身をまかせ、疲れを癒そう。

翌朝の、現実がやってくる瞬間までは。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ