貢物と過去拍手SS

□過去拍手1
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「ソワレ!おとなしくしろっ」
アルバはソワレをソファーに押し付けてなんとか服をひきはがそうと手をのばす。
「いやだ!」
ソワレがじたばたと暴れるのでアルバは馬乗りになって完全に封じ込めた。
「何を今さら、いつものことだろ?」
手際よくソワレの服を脱がしてしまうと逞しく鍛えられた体にそっと手をそえた。
「うっ…やっぱアンのほうがいいよ!」
なかば涙目のソワレにぴたりとアルバの手がとまる。
「そういう態度をとるなら仕方がない、優しくはしてやらんからな」
言い放たれてソワレはびくっと体をこわばらせた。
「え、兄貴?ちょっと待って!い・痛い!いたいったば!!」
「大人しくしてないと余計に痛むぞ」
「うぁ!やだって、もう…ひぃ!!」

しばらくソワレの悲鳴がリビング中にひびき渡り静かになったころ、ゆっくりとアルバがソファーから離れた。
「終わったぞ」
ぎゅっと目をつむったままのソワレがアルバの声にそっと目を開くときれいに傷口をガーゼでおおいテープで固定された自分の腹を確認した。
「深くなくてよかった。少しあとが残るかもしれんが、すぐにふさがるだろ」
アルバはてきぱきと消毒液をもとの位置に戻していく。
「うん、ありがと」
ソワレのわき腹にはアルバをかばおうとしてできた斬り傷があった。
といってもナイフがかるくかすめただけで出血もひどくなかったので簡単な処置を兄にしてもらうことになったのだが。
「もっと優しくしてくれたっていいのに」
ソワレの小さなつぶやきは遠く離れた場所で応急セットをしまっていたアルバに運悪く届いてしまった。
「何か言ったか?」
「ぎゃー!兄貴の地獄耳ー!!」
ソワレは床に落ちていた自分の服をひっつかんでばたばたと部屋の外へと飛び出した。
その慌てぶりにアルバはくす、と笑みをもらして後ろ姿を見送った。

「元気でなにより、か」
ソワレが忘れていったテンガロンハットをつまみあげ、アルバもまた軽い足取りで弟のあとを追いかけていった。

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