兄弟文

□someday
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ぶしつけな敵意にアルバは足を止めると、ガラクタの陰からこちらをうかがう薄汚れた少年と目があった。
サウスタウンの中でもスラム化している細い路地で、おそらくまともに食事もとっていない痩せこけた体の少年は目つきだけはギラギラとアルバをにらみつけていた。
「私に何か用かな?」
アルバがその少年に注意深く近づくと、少年はあとずさりさらに暗い路地裏へと誘いこむ。
「用ならある」
少年はあいかわらずの鋭い視線を決してアルバから離そうとはしない。
「あんたを倒す!」

「甘いな」
どさりと少年の体は冷たいコンクリートに打ちつけられた。
しかし体力も限界であることは明白なのに、少年はまた立ち上がりアルバに向かう。
そんなことを何度か繰り返してアルバはしびれをきらし、それまで以上の力を込めて少年を蹴り上げると簡単に小さな体はガラクタの中に沈んだ。
「なぜ私をねらう?」
ぜいぜいと呼吸を荒げる少年に乱れひとつない低い声でアルバが問う。
「おじさんの仇…!」
なんとか声をひねり出した少年が自分の名前を告げると、アルバはすぐに思いいたるところがあった。
以前、アルバが崩壊同然に追い込んだ弱小グループのリーダー格であった人物。
少年は彼の甥にあたるらしい。
確かあの男はその後運悪く警察の手におち、当分は監獄から出られないと聞いていた。
アルバが直接的な原因であるわけではないのだが、今の少年の状況を見る限りアルバを恨むのは筋違いとは言い切れない。
「おじさんを返せ!」
アルバは固く握り締めていたコブシをゆるめて少年に近づく。
「君は一人なのか?」
少年は答えず、ぎりぎりと奥歯をかみしめた。
「絶対に許さねぇ!」
どこにそんな力が残っていたのか暴れるように蹴り上げられた足をアルバは難なくとらえる。
「この街でそれなりの意見を述べたいのなら、それに見合う実力が必要だと教わらなかったらしいな」
アルバはとらえた足を引きずり出し、簡単に浮かび上がる小さな体を軽くあしらうと少年はすぐに意識を失った。
「ぼうやはおねんねの時間だ」
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