兄弟文

□sunshine
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 例えるなら、夕暮れ。
 誰をもの足をとめ、その美しさで魅了する。
 それでいて、すぐに姿を消してしまうなんて
 ずいぶんと残酷じゃあないか。
 決して誰のものにもならないその輝きを
 この手におさめたいなどと思うのは傲慢なのだろうか。

風にあおられ空き缶がからん、と乾いた音をたてた。
徐々にのびていく足元の影はすぐにちがうもののそれとくっついて、すでに街は闇の方が多い。
カラカラと転がっていくその姿を見送ると、うしろから近づいてきた人間にその音は遮られた。
アルバが振り向くとバランスを崩した女性の姿が目に入り、とっさに手をのばす。
ぐしゃっと缶の踏み潰される音がした。
なんとかキャッチして転倒を防いだが、相手の慌てぶりに少し眉をよせた。
「どうしました、マダム?」
体勢を立て直しながら女性はその声にすがるように顔をあげたが、アルバを見て困惑の表情をうかべた。
「み、店で…いきなり男の人が暴れだして」
女性の走ってきた方向を確認すると、ぱりんとガラスの割れる音がこぼれる建物を見つけた。
そして続く、ののしり声。
サングラスを押し上げてゆっくりと店に近づくと、数人の男たちが殴り合いをはじめたところだった。
やれやれ、と心の中でひっそりと愚痴てから、入り口で歩みを止める。
「暴れるなら、せめて店の外へ出たらどうだ?」
その声に店内は一瞬静けさを取り戻したが、互いの顔を見合わせるとまたすぐに乱闘をはじめた。
その光景にアルバは片眉をつりあげて長いため息を吐き出す。
一体、何日こんなことを続けているのだろうか。
考えるだけでも嫌気のさす連続のカウントに停止をかけた。
嘆いていても仕方がない。
「今日はどうも虫の居所が悪いのでな、覚悟してくれたまえ」
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