兄弟文

□townspeople
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公園と呼ぶには、あまりにも何もない。
申しわけなく取りつけられたブランコがかろうじて存在する空き地で少年がうなだれていた。
誰かにぶたれたのだろうか、かた頬を赤くそめて、片手にひとつ、ビニール袋をぶらさげていた。
少年は年に似合わず大人びた表情で、じっと何かに耐えるように考えこんでいる。
それから持っていたものを地面へと思い切り叩きつけようと手をふりあげた。
が、その寸前で少年の腕は別の男につかまれて、それは叶わなかった。
少年はゆっくりとふりかえり、男を見上げる。

「フェイト…」


随分と懐かしい…思い出の、夢を見たような気がした。
まだ余韻が残るような、ぼんやりとした頭を無理やりたたき起こしてドアノブを回す。
これは、眠気さましに濃いコーヒーでも飲んだほうがいいかもしれない。
しかし次の瞬間、アルバは思いもよらない方法で、はっきりと覚醒することになった。
それは本人にとってはまったくの不本意であったが、
扉を開けると同時に顔面に冷たい水をかけられてしまったのだ。
ぴちゃっという水音がやけに静かに響き渡り、その場の空気が凍りついたようだった。
だが、ことの原因は簡単にもすぐに見つかる。
足もとに伸びる青いホースの先端を握っていた彼の弟である。
ソワレはしまった、とまるで顔に書いたように立ちすくんでいた。
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