兄弟文

□perfume
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そこはいつもの後部座席。
アルバの運転で夜の街をすべりぬけていたら、それは突然ソワレの鼻をくすぐった。
知らない香り。
大人っぽくて、けれど少し甘さを残しているような人を引き付ける香り。
これは間違いなくアルバからだ。
ソワレはがばっと起き上がり、運転席ごと抱きついた。
「ソワレ?」
突然のことに驚きながらもアルバの正確な運転は変わらない。
ソワレはアルバの肩に顎をのせて、くんと香りを確かめた。
はじめてかぐ香りに違和感をおぼえる。
「くすぐったい!」
アルバは片手でソワレのひたいを捉えるとぐいっと引き離した。
「うおっ」
バランスを崩されてソワレは派手に後部座席へと倒れ込んだ。
「運転中はちょっかい出すなといってるだろう」
バックミラーごしにアルバの不機嫌そうな顔が映る。
「だって、今日の兄貴いつもと違う匂いがすんだもん」
いつもは香水などつけないアルバにしては珍しい。
鼻をこすりながらソワレは後部シートに身をおさめなおす。
「ああ、これか」
アルバはサングラスをおさえながら、運転に集中しなおした。
「今日、会った人に以前いただいてたからな。少しつけすぎたか?」
「へぇ…、別に平気、ていうか丁度いいんじゃない?」
律儀に次に会うときにはつけていくという兄の一面に感心する。

「それ、オレは結構好きかも」
素直にソワレはアルバらしい香りだと思った。
「そうか?お前はこういうの苦手なのかと思っていたが」
アルバは意外そうに首を傾げながらも、ハンドルを回す手が軽くなったようだった。
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