兄弟文

□photo
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ふいに胸がざわつく感じ。

いつも。
悪いものに限って、予感は当たってしまうんだ。



「君は、いつだって突然現れるな」
アイドリング状態の軽い振動を伝える運転席で、アルバは相手を確かめもせずに話しかけた。
「わたしなら、あなたがその写真を取り出したときからいたわ。
 あたなが気付かなかっただけ…」
バックミラーがひらりと人影を映しだした。
アルバはそれが予想通りの人物であるのをちらりと見て、また視線を手元の写真へと落とした。
「意外と無防備なのね、あんなことがあったばかりなのに」
彼女―ルイーゼの言葉は淡々としていたが、その皮肉にもアルバの反応はうすい。
「もう私たちは敵同士ではない。本当の敵は別にいる…そうなんだろう?」
手の中の写真をひとなでして、アルバは夜の明けきらない暗い海を見つめた。
「そうね。わたしのことを信用してくれるのは嬉しいけど、
 どういう心境の変化なのかしら?」
ルイーゼは運転席のすぐ後ろの扉に体重の一部を預けて、同じように海を眺める。

彼女の話した内容を素直に聞き入れるのはアルバにとって難しいものだった。
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