万華会議録

□議題5(全8P)
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 紺色の魔王とレヴィちゃんが、キヅの(正確には彼女の兄の)七輪を要求してから、確かにキヅの家から彼女らは消えた。
 その分、何故か、彼女らは部室に現れるようなっていた。そして、何故か、万華会のメンバーと親しくなっていた。もっと警戒しろと、キヅは心の中で毒づきそうになった。
 特に親しくなっているのは、レヴィちゃんと、カメだ。
 何故と疑問に思う反面、どこか納得してしまう。彼女の絵の守備範囲は、神話・伝説の類だ。人物画よりも動物画の方が上手い。そして何より、興味を覚えたものの知識を、貪欲に吸収する。科学好きもその延長だ。
 そう、貪欲に。
 いっそ周りの情報を遮断するほど、対象にのめりこむ。だから、自分が周りにどう見られているかは、考えない。
 現在のように、レヴィちゃんの背後にしゃがみこみ、尻尾の先端を折り畳み式のルーペで覗いていたとしても、スカートが汚れるとか周りの人間の精神衛生とかは思考の外だ。
 そもそも、そのルーペは3枚のレンズを合わせると倍率が10倍まで上がる高性能の物だ。どこで手に入れた。
「へぇーよく見ると鱗ついてるねぇ薄くて肌と見分けつかないや。トカゲみたいにかさついてないし、サンショウウオみたいに粘液出てる訳でもなし。人間の皮膚に近いかな? 
鱗に虹光沢があるのは、分光させてるんだろうねやっぱり。スペクトル分析かなすっごいね綺麗だね。触り心地いいねぇさらさらして。
えーっと。尻尾の裏側には菱形の部分。周りに比べて色が濃い。橙色が近いかも。左右から見ると三角形に見えるのはこれだね。菱形って言うよりダイヤ形かな。この部分の鱗は他に比べて大きく、ガラス光沢あり。尾の生え際から先端にいくにつれ、小さくなる。大きい部分はわたしの掌くらいあるよ。これ何?」
「主様が夜、ご本読んでくれるです。その時使うですよ」
「読書灯? ってことは光るの!?」
「です」
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