頂き話

□Thank you
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 その日の任務は、随分と変則的なメンバーでのものだった。亮太が風邪を引き、任務に当たれず(散々メンバーに馬鹿にされていた。)麻衣子が前回の任務での怪我が治らず、万全の体制で任務に臨めないことから、本部の指揮を麻衣子、現場に栄、由美、充の3人が向かうことになった。



 「えらい面白い面子で仕事するハメになったな。」
 可笑しそうに由美が言うと、すかさず栄が口を開く。
 「余計なこと言っていないで、任務に集中しろ。」
 「なんや栄。お前しばらくぶりの現場やろ。集中した方がえぇの、そっちとちゃうん?」
 その通信を聞いていた麻衣子はため息をつく。本部に残るのはいつも栄か由美だ。ふたりが揃って現場に行くなんて滅多にない。いや、今までにあっただろうか。ない。そう記憶が出した答えに、またため息をついた。きちんと任務をこなせるんだろうか。心配になりつつも、麻衣子は指示を出す。
 『無駄口叩いてないで、地下3階に行って。』
 3人は指示されたとおりに、地下に向かった。そこでは10名程度の男たちが何やら密談を交わしている。
 「情報よりも多いな。栄、どないする?」
 「当初の作戦通りで構わないだろう。充が飛び込んだら、由美。後方支援は俺。」
 現場の意見がまとまったのを聞き、麻衣子が言う。
 『行動開始。』
 「了解。」
 充が飛び込んで中央の電球を撃ち落とす。男たちは咄嗟に反撃しようとするが、充の攻撃が一瞬早かった。タタンと音が響くと、間合いを取っていた由美が確実にナイフで男たちを捕らえる。奇襲にあった男たちはなす術もなく、簡単に戦意を喪失し逃げ惑う。俺の出番はなさそうだな。そう栄が思った時だった。
 「栄!」
 普段声を荒げることのない充が叫んだ。
 「!」
 栄は、自分の後ろに人影を見つけ咄嗟に体を反転させる。鋭い痛みをわき腹に感じた。それでも相手の頭を打ち抜くと、目の前がぐにゃりと歪んだ。
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