short

miscast(完結)
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「無理!」
「無理でもきいてもらわなきゃ困る」
「嫌!」
「嫌でもだ!」


さっきから繰り返される双子の終わりないやり取りに、最早アスランが口を挟む余地はなかった。




◇◇◇◇


キラがプラントに来て半年。すっかりきっぱり吹っ切ったカガリが、視察のついでに立ち寄ったのが事の始まりだった。
そろそろ入籍しようかと話し合ってもいたから、渡りに船とばかりに、早速カガリに報告したキラ。
しかし思えばそれが良くなかった。
アスランにも事の重大さがいまひとつ理解出来てなかったのは、否定しない。
しかし何よりキラ自身に自覚が足りなかった。
自分が一国の“姫”であるという、自覚が…。


「カガリ。僕そろそろ結婚しようと思うんだけど」
だから唯一の家族であるカガリに、まるで世間話のような軽い調子でキラは言ったのだが。
それに対するカガリの反応は、想像を絶する温度差を伴っていた。
「そうか、おめでとう!もしかしてそういう報告を受けるかと思ってはいたが。そうと決まれば忙しくなるぞ!」
「忙しく…?」
キラだけではなくアスランも、そのカガリの台詞には首を傾げた。
そんな当人達の戸惑いに気付く事無く、カガリが続けた言葉は、キラを仰天させるに充分な威力を持っていた。
「まず首長会議にかけて、いい日を選ぶ事から始めないと。マスコミに発表するのはそれからだな…。あぁ婚約会見の必要もあるか。となると場所の確保も…」
「ちょ・ちょっと待ってよ!カガリ!!」
どんどんカガリの口から出る未知な単語。
我に返ったキラが、必死でストップをかけた。
「ん?なんだ?」
「僕、式も披露宴もいらないよ?アスランとも話して、入籍だけでいいって考えてるんだけど…」
「はぁ!?」
心底信じられない様子で、カガリは鋭い視線をアスランに向けた。
「アスラン!お前までそんなことを言ってるのか!?」
「キラがいいならってことで、同意はしたが。…何か不味いのか?」
ここにきて、アスランにはようやくカガリの言いたいことが漠然と分かりかけて、語尾が次第に小さくなる。しかしキラには未だ全く理解出来ないようで。
「不味い?それってどういうこと!?」
それがアスランとの婚姻に対するものだと勘違いしたキラが、やや悲痛な声を出す。
アスランは宥めるように隣に座るキラの髪を梳いてやった。




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