short

da capo(完結)
1ページ/1ページ




「じゃまた明日!」
「うん!ばいばーい!!」

「またな、キラ」
「お休み〜」

「元気でな」
「きみも」

「それじゃ」
「頑張ってね」
「そっちもな」




今まで様々な場面で取り交わしてきた別れの言葉。
お互いの家に帰る時の毎日の慣例だったり、遠く離れる直前の最後の挨拶だったり。


そして二人は背中を向けて歩き出す。
お互いが目指す場所へ向けて。



だけどアスランの知らないことがある。
キラがいつも三歩歩いて足を止め、アスランの背中を見送ること。
決して振り返らないと分かっていて、背中へと縋る瞳を向けること。


アスランの強さは前を向く強さ。多くの困難を抱えても、どれだけ踏み躙られても、それを理性でコントロール出来る。そして正義と信じた目指す場所へ、真直ぐに歩いて行ける。

だけどキラは違う。
感情を殺して微笑っても、背中を向けて歩き出すフリは出来ても。
弱い心は振り返ってしまう。
縋ってしまう。

愛した人の後ろ姿に。




振り返れと祈ったこともある。願いを込めて熱い瞳で。

行かないで、と。


だけど同時に振り返らないで欲しいとも思う。
こんなみっともない顔なんか見られたくない。
嘘でも顔を上げて前を見据えるキラだけを知っていてくれればいい。

どれだけ辛くても、膝を折ったりしないから。
それがキラの支え。



アスランは知っていて知らないフリをする。
それがキラを支えているから。
必ずキラの元へと帰ることを誓いながら。




二人はそれぞれの思いを胸に、今日もまた別れを繰り返す。


「いってきます」
「いってらっしゃい」


また二人、最初に戻る保証などないけれど。

在り来たりな挨拶だけをお互いに残して。




おしまい
20090210



†††後書き†††


昔からイミフな話を書いてたんですね…;;






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ