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エゴイストは愛を残す(完結)
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「キラが月へ?」



戦後オーブとプラントに別れたアスランとキラ。それぞれが“力有るもの”として忙しくしていて、顔を合わせることはあっても、二人だけでゆっくり話すゆとりなど皆無だった。


やっと“親善大使”という仕事込みではあるが、アスランがプラントへ時間的余裕を持って行ける機会に恵まれたのは、戦争終結から実に二年の月日が経とうとする頃であった。



アスランはこのチャンスにキラに言っておきたいことがあった。
もしかしたらそれによってキラとの優しい関係を壊してしまうかもしれないが、今の関係を続けることがもう自分には辛くなってきたのだから仕方ない。悪くすれば疎まれてしまうだろうが、オーブはもうアスランがいなくても大丈夫だ。姿を消してしまうことだって出来る。



そこまでの覚悟をしていたのに、いよいよ出発の前日となった時、突然ラクスにキラの不在を告げられたのだ。
“大使”という名前を持つ以上何ヵ月も前から日程は組まれている。当然キラだってアスランが行くことは知っていて、逢えるのが楽しみだとさえ言っていたのに。

それなのに、肝心のキラがプラントにいない?



「どういうことですか?」
「言葉通りです。キラには先日からわたくしの命令で月に行ってもらってますの」
「……何か緊急事態でも?」
「いやですわ、アスラン」
ラクスはコロコロと笑って言った。
「そのようなことがもしあったのだとしても、今は他国の人となった貴方に話せる訳がないじゃありませんの」

確かにその通りだ。ラクスの言っていることに矛盾はない。
だが何かがおかしい。





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