虚しい関係

□虚しい関係
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誘ったのはキラからだった。


アスランはどこまで行ってもノーマルで、恋愛対象は間違いなく女である。しかも両親が立派過ぎてあまり甘えられなかった幼少期を過ごしたアスランは、いずれ自分が家族を持つ時には温かい家庭がいいなどという淡い夢まで抱いていた。
キラにしても口に出してこそ言わないが、幼馴染みのそんな小さな希望が叶えばいいと密かに応援してさえいたのだ。


でもいつだって優しくない運命は、都合よくは転ばなかった。



コーディネーター出生率の低下の問題である。




遺伝子操作という不可侵の領域に手を出した人間に対する神の鉄槌なのか何なのか。統計上の現実を前に、原因など最早どうでも良かった。二世代目が適齢期を迎え、突如叫ばれるようになったそれは、高いコーディネートを受けた者ほど顕著に出生率が低く、相性のよい遺伝子を持つ相手とでも自然に子供が産まれることは難しいとされた。

それでもアスランは諦めなかった、のだと思う。敢えて宣言したというわけではないから、一番近い位置にいたキラといえど真意までは伺い知れない。でもアスランはずっとラクス・クラインとの婚約を継続していた。
戦争を体験し人生観の変わったラクスの方が、アスランとの婚約解消を望むまでは。

ラクスの申し出をアスランは意外にもあっさり認めた。丁度その頃はカガリとの恋愛の最中で、きっと生真面目な男のことだから“愛のない結婚”に疑問を抱いていた時期だっただろう。
つくづく間が悪かったとしか言い様がない。

カガリとアスランでは“子供のいる温かい家庭”など、最も望めないものの一つだったのに。ナチュラルと最高ランクのコーディネートを施されたアスランでは。
しかもカガリはオーブ代表首長となることを約束された身だった。他人に言われるまでもなく、先は見えていたのだ。


そして女性の方が強いのは、いつの世も変わらない。





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