虚しい関係
□虚しい関係
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恋という熱に浮かされた時期が過ぎれば、カガリは毅然と前を向いた。それを“アスランを棄てた”と一言のもとに断罪するのは余りに酷というものだろう。人に恋焦がれる気持ちに男女の違いなどないし、カガリにとっても文字通り身を切られるような選択だったに相違ない。そういう所をキラたちに見せることはなかったが、お互いを憎からず想っている状態での別れが辛くないはずはなかった。
それでもやはり女性は強い。何より一度決めた道を見据える現実的な強さといったら、男など遠く及ばないのだ。
女であるカガリは吹っ切った。
でも、それなら男であるアスランは?
そう考えた時、キラは居ても立ってもいられなくなった。
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それでも最初は自分もアスランの事情と大差ないのだという絶望を、一時的に共有するくらい考えだった。
“同情”だと思われるのも覚悟の上だった。
キラの出生の異常さをアスランは知らないのだから、同じ“男”という立場のキラに慰められるなんて、さぞやプライドに障に違いない。アスランにこれ以上重い枷を背負わせるつもりは無いキラが、この先も自分の秘密を語る日が来ることはないだろうが、それでも誰よりもアスランの気持ちが分かる宿命を背負っていたのは確かだ。
悩みながらも差し出した救いの手に、アスランは縋った。キラの方が却って戸惑ってしまったほどに。
余程追い詰められていたのだろう。それまでのアスランはどちらかといえばキラのことを庇護対象としていた節があるから、これはまさかの展開だった。
あれほどまでに孤高のプライドを崩さなかったアスランが。
キラの前でだけ愚痴を言ったり、時には感情の抑制すら効かず、涙を見せるようになるなど、想像もしてなかった。
それは誰も、誰も知らない、キラだけのアスラン。
やがてキラは思い知る。
アスランを想う自分の心が、幼馴染みに対する感情を、大きく超越したものであったのだと。
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