虚しい関係

□虚しい関係
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これはただの方便だった。
キラだってほんの数年前までは普通に異性に興味があった。アスランと関係を結ぶまでは、不特定の女性と寝たこともないとは言わない。
だからこれはキラにとって都合がいいから吐いた、でまかせに過ぎなかった。

そういうことにしておけば、アスランがキラを求め易いと思ってのことだ。


「それでも可能性があるなら家庭を持って――」
尚も主張を取り下げず言い募るアスランに、ほとほとうんざりする。キラだって余りそこのところには触れたくないのに。
「アスランって…ほんと、鬱陶しいよね」
「!鬱陶しいとはなんだ!俺はお前のことを考えて」
「だからそれが余計なお世話だっていうの」
とうとうキラは身体ごと反転し、アスランに向かって指を二本突き出して見せた。はっきり言ってやらないと、この唐変木には伝わらない。
「きみはそりゃあ色々と勘違いしてるけど、中でも特に酷いものが二つある。一つは他人の性癖に口を出すなってこと。結婚して子供を授かってっていうのは人間として正しい姿かもしれないけど、それが出来ない人間だっているの。だからってきみに間違った姿だと差別する権利はないでしょ」
「俺は別に――差別だなんて…」
ごにょごにょとした言い訳めいた言葉を、キラは綺麗に無視してやった。
「あともう一つは仮にきみの言うように僕が適当に選んだ女の子と結婚したとして、そんな愛情のない家族ごっこで誰が幸せになれるのかって問題。そういう気持ちの伴わない結婚なんて嫌だから、アスランだって僕の誘いを受け入れたんでしょ?“間違った姿”だって分かっててもさ」
「………………」
「それに女の子って子供、欲しがるもんね。授からないかもって分かってて結婚なんて残酷な選択肢は有り得ない。きみは特にそういう人だし。でも悲しいかなそれで性欲まではコントロール出来ないもんね。男ってそういうものじゃない?」
「俺は」
キラは突き出した二本の指を一本にしてアスランの唇に触れ、続く言葉を遮った。





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