虚しい関係

□虚しい関係
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結果的に同性愛者を蔑視したような発言になってしまった謝罪など聞きたくないし、真実同性愛者でないキラはそれを受け取る立場ではない。まして女性と愛のない体の関係を持つには抵抗があるからと、キラを捌け口にしていることへの謝罪なら、尚のこと御免被る。

「いいんだよ。僕は男しかそういう対象にならないし、きみは捌け口が必要だったってだけ。これは単なる利害の一致なんだから、小難しく考えることはない。特にきみが考え出すとろくな事にならないしね」
「少しは俺の話も聞けよ」
「やーだよ」
茶化して言うと、今度こそ議論は終わりとばかりにクルリとキラは踵を返した。
「お前は平気だっていうのか?このまま俺に利用されるだけの関係でも?それでも俺には何も求めないと?」
それでもアスランは追及を止めなかった。

「…じゃあ逆に訊くけどさ。きみに一体何を求めればいいの?」
背中越しのキラの声は妙に心許ないものだった。
「きみと僕はどこまで行っても交わることはない。だから僕はこれからもきみには束の間の相手ってこと以外、何も求めるつもりはないよ。これほど言っても負い目が拭えないっていうなら、原因は上下の問題なのかもね」
「上下?」
「男の僕に女役やらせてるって罪悪感?」
まるで他人事のように言うキラが、アスランは嫌だった。しかしどう言えば気持ちを解ってもらえるのか、その術までは思い付かない。
「違うんだ。俺がしたいのはそういう即物的な話しじゃなくて――…」
と、まともに取り合うつもりはないのか、アスランの台詞の途中でキラは大欠伸をした。
「あ〜あ、疲れた〜。ねぇもういいでしょ、今夜はこれで。僕、明日早いからもう部屋へ戻って寝るから」
「キラ!」

ドアロックの上を軽やかに滑っていたキラの指が、強い呼び掛けに反応するようにピクリと止まる。しかしそれはごく僅かの間で、すぐに解錠を知らせる電子音が響いた。
無機質な電子音は、キラが主張を譲ってここに留まることにしてくれたのだとのアスランの期待を、一瞬で砕くものだった。





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