虚しい関係

□虚しい関係
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「ひとつだけ言っとく」
顔だけ振り返ったキラは、不完全燃焼気味のアスランを意にも介さずサラリと告げた。


「上下の問題なら尚更きみが気に病むことはない。単に僕は“下”が好きなだけだから。なんか“愛されてる”って思えるじゃない?」
わざとアスランの嫌う“即物的”な表現をしてやってから、キラはゆったりと口角を上げた。


「おやすみ」




傷付けばいい、アスランなんて。

そう思うようになったのは何時からか。


アスランの言いたいことくらい聞かなくても大体分かっている。
このまま関係を続けるならば“恋人”になろうと言いたいのだ。
無論それが狡い計算などではないことは承知している。アスランは打算的な人間ではない。そういうことに器用なら、もっと人間関係もスムーズだったに違いないのだ。
そんな彼が先日から度々キラと話し合おうとしているのは、体の関係に引き摺られた“キラを好きになった”という“勘違い”。
でもキラが欲しいのは“曖昧な勘違い”などではなかった。

同じ想いを返してくれないなら、そんな関係、こちらから願い下げだ。
だからアスランの戯言に耳を貸すつもりはなかった。

だいたい、睦み合った直後の“恋人”がベッドにいて、眉を顰めてしまう人間がどこの世界に居るだろう。しかも悪いことに無意識に。

どうせ彼はいつか相応しい伴侶に巡り合い、積年抱いていた夢を叶えるに違いない。勿論それはキラが望むことでもあるのだけれど。


その時泣くのは真っ平だ。


だから彼の告白なんか、受けてやるわけにはいかないのだ。報われないと分かっている想いに、これ以上踏み込まないためにも。
精々なびかないキラの態度に傷付いていればいい。どうせ今だけだ。
そのくらいの意趣返しをしてやらないと、片想いしている自分の心が余りにも可哀想だ。




まさかアスランがキラと同じ想いを抱いているともは思いもせずに。

アスランとの距離をそのまま象徴とするかのように、ふたりを隔てたドアに背中を預けて、キラは小さく舌を出して呟いた。


「ざまぁみろ」




おしまい
20120324
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