虚しい関係

□望んだ関係
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環境に培われた思考回路というものは、一朝一夕には易々と変えられるものではない。最早これも価値観と捉えてもいいのだろうから。


案の定、アスランは頑なほど潔癖だった。
どうにかしてもっと楽な気持ちになれるようキラが言葉を尽くしても、返って来たのは反発ばかり。

その思考の先には絶望しかないというのに。



「じゃあきみはどうしたいの?女の子じゃきゃ、軽く考えられる?」
「え――?キラ?」
この時、いい加減グズグズと煮え切らない幼馴染みに苛々してなかったとはいわない。ただアスランの悩みはそのままキラの行く末でもあったから、そんな袋小路からはサッサと脱出したいとそれだけだった。
「手っ取り早く、僕で試してみよっか?」
一線を越えたきっかけは、こんな端っぱな台詞だったと記憶している。意外にもアスランからは然程の抵抗もなく、キラもその辺を追及するほど野暮ではなかった。
要するにお互い欲求不満だったということだ。

だがキラにはアスランを汚すつもりは全くなかった。彼はいずれ相応しい伴侶を得て、温かい家庭を築く身だ。可能・不可能の問題ではなく少なくともそれを望んでいる。邪魔するのは本末転倒だし、また障害になりたいわけでもない。

だからといっては語弊があるかもしれないが、キスはしなかった。
それは本当に愛し合った相手とするべきものだと思ったし、こんな本能に任せたただの欲求を解消するだけの行為には、相応しくないと考えたからである。
アスランも求めて来なかったから、同じ気持ちだったのかもしれない。





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