虚しい関係

□虚しい関係
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「…――んっ!アス‥ラ」
重く淀んだ淫らな空気が薄暗い室内を満たしている。衣服の代わりにそれをたっぷりと身に纏いながら、ひとつのベッドで蠢くふたつの影。
「キラっ!キラ!!」
お互いの名を呼び合う声と共に、快楽に濡れた吐息と、湿った音が辺りに響いていた。

やがてそれなりに慣れた行為は、ふたりを同時に頂点へ押し上げる。
ビクンと大きく体を揺らしたふたりは、何度かビクビクと余韻のように全身を痙攣させ、ほどなくキラは自分の上に位置していたアスランの重みと、熱い迸りを受け止めた。




◆◆◆◆


「気持ち良かった?」
交替で使ったシャワールームで身を清めたあと、キラが髪から垂れる雫もそのままにベッドに腰掛けている。アスランはそれに僅かに眉を寄せ、気付いたキラが軽く肩を竦めた。
「はいはい、折角綺麗にしたベッドが台無しだよね。悪かったよ」
潔癖なアスランが情事のあとのベッドでそのまま眠るなど有り得ない。キラが受け身である事情からシャワーは必ず先に使うが、出た時にはベッドは綺麗になっているのが常だ。
今日は偶々アスランのベッドを使ったが、キラのベッドでもシーツを代えたりするのは専ら彼の役目なのだから筋金入りだ。


当然のことながらそこに甘いピロートークは存在しない。余韻を味わう暇も与えてはくれない。
(そもそもそういう関係じゃないんだから仕方ないけどさ)
キラは立ち上がったついでにヒラリと手を振ってドアへと向かった。シャワーが済んだらサッサと自室へ戻れば良かった、とほんの少しだけ後悔する。
一線を越えたとはいえ、自分たちはただの幼馴染みだ。いい年をした男ふたりが夜中に何をやってるのやら、と考えると可笑しくなった。


きっとひとり寝の寂しさなど微塵も感じることなく、今夜はぐっすり眠れるはずだ。それでいい。





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