冒涜

自覚(完結)
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その日のカガリは珍しく鏡を覗き込んだりしながらボソリと呟いた。
「ほーんと。油断大敵だよなぁ…」
彼女の執務室を訪れていたキラは、チラリと姉に視線を移して端末のエンターキーを押した。
「これで良しっと。で、カガリ。何が油断大敵なの?」
「おー終わったのか、サンキューサンキュー。いや、私って砂漠に居た時期があったろ?」

カガリはキラが席を譲るように立ち上がった椅子へと移動した。試すようにキーボードを操作する。
「うん、いいんじゃないか?使い易そうだ」
「一応リクエストには全部応えたつもりだけど、暫く使ってみて不都合あったらまた言ってね」

今日キラはカガリの端末に、頼まれていた新しいシステムのプログラムが完成したため、それをインストールしに来ていたのだ。
「流石この手のことはお前に頼むのが一番だな」
「そんなこともないよ。得意ってだけで、専門にやったわけじゃないし。で?さっきの話しだけど」
砂漠に居たというのは、キラと再会した時のことを言っているのだろう。だとすればもう随分と昔の話だが。
「ああ、この前ラクスにその頃の話をする機会があってさ。なんかスキンケアとかどうしてたんだ?なんて聞くから、何にもしてなかったって答えたらえらく驚かれてさ」
「ふーん」
「若いからって胡坐をかいてたら、年取ってから後悔する、なんて言うんだ」
正真正銘の男であるキラには、正直余り興味の持てない話題であったが、尋ねたのはこっちだったから、真剣に聞いてるフリをした。
「で、鏡見たらやっぱあるんだよなー。小さいシミとか結構さ〜」
「そう?分かんないけど」

そう言って小首をかしげる弟は、絹のように滑らかな肌。女として、双子の姉として、そのプライドを傷付けるには充分だった。





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