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□幸福と羨望と(完結)
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ずっと気持ち悪かった。
流されて巻き込まれて、そこに自分の意志が介在する余裕もなくて。

答えを求めてひたすら戦った。
そして見付けた進むべき道。

自分で見付けたたったひとつのその道が、例え破滅へと向かうものでも構わない。



それを見付けられただけで、幸せだと思うから。






「こんな所に閉じ込められていたのか!探したぞ!!」
突然扉が開いて、宵闇色の影が滑り込んで来たのに応え、キラはゆっくりと椅子から立ち上がった。見た限りでは拷問を受けた様子もない。それに一先ず安堵したアスランだったが、同時に強烈な違和感に襲われた。
キラが拘束すらされてなかったからだ。
思えば随分久し振りとなる再会に、キラはそれはそれは綺麗にふわりと微笑んで魅せた。
「きみが知らないだなんて、よほどレアな部屋みたいだね、ここは」
「キラ――」
それでも最悪の事態は免れていたことに、安心して力が抜ける。

今そんなことをしている場合でないことも充分承知していたが、アスランは目の前の温もりを包み込むように抱き締めた。
命の存在を確かめるように。




◆◆◆◆


全宇宙を巻き込んだあの戦争は終わった。
過去の多くの戦争がそうであったように、終末は“終戦協定”という形をとることになる。

突き詰めて行けば行くほど、誰も悪くはないことを、一部の高官や軍人が悟っての終戦協定。
コーディネーターもナチュラルも、最初は皆、自らの権利や主張を勝ち取るために立ち上がった。それを求めるのは人間として当たり前のことで、咎められる性質のものではない。だが話し合いや譲り合いで解決するには時間が必要で、一向に解決の糸口を見出だせないまま、蓄まりに蓄まったフラストレーションを爆発させたような過激な人間たちを生んでしまうのは、実に愚かで不幸な人間の性なのだろうか。
そうして人類は武力衝突を繰り返してしまうのだ。

戦いを始めたとて、落としどころなど決まり切っているというのに。





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