捧げの桜

□君の隣は譲れない
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勾陣が笑みを浮かべながら百虎を見ると百虎は少々困惑しながら…しかし、やはり笑みを浮かべながら頷いた。

その時、二人はすぐ近くに同胞の神気を感じた。そこに顕現したのは漆黒の黒髪に黒燿の双眸を持つ小柄な同胞。

「玄武」

百虎が名を呼ぶと玄武は百虎に視線を移し口を開いた。

「百虎、太陰はいるか?」

「いや、こちらにはまだ戻っていない。」

「そうか…」

そう呟いたきり眉を寄せて考え込む玄武に、百虎はその様子に合点がいきながらも声をかける。

「太陰がどうかしたのか?」

百虎が問うと玄武が重々しく口を開いた。

「今日は風がやけに強い。その風の中に太陰の神気を感じたのだ。
だが、もう一つ別の気も混じっていた。
最初は妖しか何かと対峙しているのかと思ったのだが…その気は我ら十二神将に近いものを感じる。
我らに近い気を持つ者は小数なら心当たりがあるがそれとは多分違う。…だから一体何なのかと考えていたのだ。」

「太陰に客人が来ているそうだぞ。」

真剣に考え込む玄武に苦笑しながら勾陣が答えた。

「客人?…太陰に?」

「ああ。大陸の神仙、風伯で名は巽二郎という。
本名ではないようだが。だから神気も俺達に近く、風将とも似ているようだ」

「大陸の神仙…!?何故そのような者が?」

百虎が答えると玄武は驚き、再び問う。今度は勾陣が意外だという顔をする。

「ん?お前会ったことがなかったか?」

「会うも何も知らなかった。初耳だ」

「そうだったか?」


驚く勾陣をじと目で見る玄武のやりとりを傍観していた百虎が口を開いた。

「勾陣、確かあの時玄武あの場にいなかったと思うぞ」

「ああ、そうか。確かそうだったな。それなら知らずとも無理はない。
すまない玄武、てっきりお前もあの塲にいたと思っていたよ。…と言っても私もちゃんと会ってはいないがね」

「いや…それは構わない。それで何故、大陸の神仙が?」

「前に風が今日のように強い日があってな。やはりその風も自然が起こす風ではなかったからその時、清明に命じられて俺と太陰でそいつの正体を突き止めに行ったんだがその時に会ったんだ」

「…もしやと思うが…その風が強い日というのは百虎と太陰が異形の気配を追っていて嵐のようだったあの日のことか?」

百虎の話を聞き、玄武が眉を寄せて尋ねた。
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