月夜語り

□Once more love(前編)
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『ごめん…別れたいの』

どうしてあの時、あんな言葉を言ってしまったのか。
確かに彼を好きだったのに。
自分の言葉を聞いた彼のあの表情が今でも脳裏に過る―…


『Once more love 』


「太陰は玄武くんと幼馴染みなんでしょ?」

クラスメイトから問われたことは、今までにも問われたことのあるものだけど、今のクラスになってからは初めての質問。
昼休みの、人もまばらな教室で、高校に入学してからできた友人が興味津々という風に聞いてきた。

「そうだけど…」
「ずっと一緒にいるのに、お互い好きになったりしないの?」

この質問も何度目だろう。
そんなことを思いつつも、彼女に悪気がないことはわかるから顔に出さずに答えるけど。

「ないわよ」
「ええ?本当に?近くにいるのに意識したりしないの?」

驚きと興味の含まれた問い。
だから、わたしはこの手の質問を受ける度に溜め息をつきたくなる。

「ないない。なんでそんなこと聞くのよ」

「だって、幼馴染みってなんかいいじゃん〜付き合いが長いからお互いのことわかりあえてそうだし」

「ドラマの中とかではそういうのあるんだろうけど、現実はそんなことないわよ」

少女漫画とか、幼馴染みがカップルになる話は王道かもしれない。
シチュエーション的には確かに理想だ。


「えーそうかなぁ。太陰と玄武くん、お似合いだと思うけどな〜」

「お似合いなんて初めて言われたわ」

思わず吹き出してしまった。

「え〜?初めて?」

「お似合いなんて言われたことないもの。だいたい、兄妹みたいって言われてたわ」

「そう見えるほど仲いいってことかね。私はお似合いだと思うよ。お互い気を許しあってる感じだし。付き合っちゃえばいいのに」

「ありがとう。でもね、それはあり得ないの。
だって…」



「玄武には彼女がいるから」
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