月夜語り
□Once more love(前編)
1ページ/17ページ
『ごめん…別れたいの』
どうしてあの時、あんな言葉を言ってしまったのか。
確かに彼を好きだったのに。
自分の言葉を聞いた彼のあの表情が今でも脳裏に過る―…
『Once more love 』
「太陰は玄武くんと幼馴染みなんでしょ?」
クラスメイトから問われたことは、今までにも問われたことのあるものだけど、今のクラスになってからは初めての質問。
昼休みの、人もまばらな教室で、高校に入学してからできた友人が興味津々という風に聞いてきた。
「そうだけど…」
「ずっと一緒にいるのに、お互い好きになったりしないの?」
この質問も何度目だろう。
そんなことを思いつつも、彼女に悪気がないことはわかるから顔に出さずに答えるけど。
「ないわよ」
「ええ?本当に?近くにいるのに意識したりしないの?」
驚きと興味の含まれた問い。
だから、わたしはこの手の質問を受ける度に溜め息をつきたくなる。
「ないない。なんでそんなこと聞くのよ」
「だって、幼馴染みってなんかいいじゃん〜付き合いが長いからお互いのことわかりあえてそうだし」
「ドラマの中とかではそういうのあるんだろうけど、現実はそんなことないわよ」
少女漫画とか、幼馴染みがカップルになる話は王道かもしれない。
シチュエーション的には確かに理想だ。
「えーそうかなぁ。太陰と玄武くん、お似合いだと思うけどな〜」
「お似合いなんて初めて言われたわ」
思わず吹き出してしまった。
「え〜?初めて?」
「お似合いなんて言われたことないもの。だいたい、兄妹みたいって言われてたわ」
「そう見えるほど仲いいってことかね。私はお似合いだと思うよ。お互い気を許しあってる感じだし。付き合っちゃえばいいのに」
「ありがとう。でもね、それはあり得ないの。
だって…」
「玄武には彼女がいるから」