月夜語り

□想いをあなたに…
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「…バレンタインかぁ…」
ふぅっという溜め息と共に太陰は呟いた。
太陰ははベッドの上に横になりながら壁に掛かっているカレンダーをじっと見つめる。

彼女は迷っていた。

「どうしよう…」

明日はバレンタインデー。
世間では2月に入った頃から、もう店にはチョコレートやら手作りグッズやらバレンタインづくしで、女の子たちも誰にあげるか、どんなチョコレートを作ろうか期待や希望に胸を膨らませている。

そんな中、太陰はなかなか心を決められずにいた。
太陰を除く女性陣(天一、勾陣、天后、彰子)はもう既に決まっており、チョコレート作りの準備に取りかかり始めている。
「もう皆準備してるのに〜っ!何でわたしだけまだ決められないのよーっ!」

うじうじしている性分ではない彼女はとうとう自分自身に腹が立ってきた。
その時、


―コンコンッ―


部屋をノックする音がした。

「はーい!誰?」

太陰が返事をするとドアが開き、入って来たのは勾陣だった。

「勾陣!どうしたの?チョコレート作りしてるんじゃなかったの?」

勾陣もリビングで天一たちと一緒にチョコレート作りに参加していたはずだ。
「ああ。そうなんだが、もう作り終えて冷やしているところさ。」
「え!?もう作り終わったの?」

「私と天后はな。
私たちのは義理だから天一や彰子嬢のように本格的なものでなくてもいいからな。」

「ふーん。でも、騰蛇には義理じゃないでしょう?」

「ん?どういう意味だ?」

「え?どういう意味って…本命じゃないの?」

勾陣は一瞬、太陰の言葉に虚をつかれたがすぐに笑い出した。


「? 何がおかしいのよ?」

「いや、なぜそう思うのかと思ってな。」

「なぜって…それは…えーと、二人共仲良いし。」

「ほぅ…仲が良く見えるか?」

「うん…。よく一緒にいるし…違うの?」

「まあ…確かに一緒にいることは多いな。だが、よく一緒にいると言うのならお前と玄武もだろう?…いや、「いつも」の方が正しいか。」

「そうでしょう?…て、そんなに玄武と一緒にいないわよっ///」
太陰が頬を赤く染めながら反発する。


「そうか?見かける度に一緒にいると思うがね。買い物を頼まれた時や、家にいる時も…」

「そっそれは!!
たまたま何かしようとすると側に玄武がいるだけで…っ!」

「「側にいる」と「一緒にいる」とは同じ意味だろう?」
勾陣の言葉を遮って否定する太陰に、勾陣はニヤニヤしながら突っ込みをいれる。

「う゛…でっでも…」
「それに、大抵玄武が側にいるのではなくて、お前から玄武のところに行くのが多いのではないのか?」

図星だった。太陰の方から玄武のところに行くことの方が多かったのだ。

(た…確かにそうかも…

「そんなに玄武が好きなら迷うことはないだろうに。」

「!! だっ誰が玄武なんて…///」

「嫌いなのか?」

「ちっ違うわよ!そんなわけないじゃない!!…あっ…」

そう言った時、太陰は、はっとして口を手で押さえる。が、もう遅い。

「ほぅ…。」

勾陣がニヤニヤしながら太陰を見る。

「…」

太陰の頬が再び、みるみる赤く染まっていく。

「つまり、玄武のことが「好き」ということだな。」


「 !! 」


その言葉に太陰の顔はとうとう真っ赤に染まった。

「なんだ。もう本命がいるのだから、こんなところにいないで、天一たちと一緒にチョコレート作りでもしてくればいいだろう。」

勾陣が口元に笑みを浮かべながら促す。

「だっ…だって、わからなかったんだもの…。」

「何がわからないんだ?」


勾陣が怪訝そうに問う。
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