月夜語り
□君の想いに敵う物
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「…もうすぐ、ホワイトデーだね。」
ポツリと呟いたのは昌浩だ。
そして、その呟きにビクッと反応した者が二人。
「二人供、もうお返し用意した?」
昌浩は、振り向いて困惑気味な顔をしている二人に問いかける。
「いや…まだだ。」
「わ、我も…。」
その問いかけに答えたのは騰蛇と玄武だった。
「…だよねぇ。俺もまだなんだ。」
昌浩が肩をすくめながら言った。
バレンタインに続いてホワイトデーというものがある。
バレンタインは女子が悩む日でもあるが、ホワイトデーは逆に男子が悩む日でもある。
「女の子って何をもらったら嬉しいんだろうね?」
「…俺には見当もつかん。」
「我もだ…。」
三人共、頭を悩ませる。
「朱雀はもう用意したと言っていたな。」
玄武が思い出したように言った。
「うん。さすがだよね。「天貴は絶対に喜んでくれる」って自信満々だったし。」
昌浩は、その時の朱雀の様子を思い出しながら言った。
「あのバカップルがお互いのことを理解していない訳がないからな。」
騰蛇の言葉に玄武と昌浩は納得する。
「あの二人ぐらいの関係なら、すぐに相手の喜ぶ物がわかるのに。」
昌浩がため息をつきながら呟く。
「それはそうだろう。けれど、そこまでになるためには、自分で相手のことを考えていかなければだめだ。だが、考えるだけでなく行動も必要だ。少しずつ積み重ねていくことで、初めてあの二人のようになれる。」
「なるほど。」
騰蛇の言葉に玄武が納得する。
騰蛇の言う通り、あの二人のようになるには、自分で努力していかなければならない。相手のことを考えて、行動していかなければ。
思い返せば、朱雀も努力していた。天一のためになにが出来るか、どうすればもっと気持ちが近づけるか…常に頭を悩ませていた光景を思い出す。誰だって、最初から相手のことを理解出来てはいない。自分で理解しようとしなければ駄目なのだ。
自分で努力して、互いを理解して初めて「恋人」になれる。
「そうだね。紅蓮の言う通りだ。自分で考えなきゃね。」
昌浩も頷く。
「でも、なんで紅蓮そんなに二人のこと理解してるの?」
昌浩がニヤニヤしながら尋ねる。
「いっいや…///理解してるというか俺が二人を見ていてそう思っただけだ。」