動乱の氷華

□新たなる世界で
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ゆらゆらと揺れる着物の裾と、
その足取りに目をやりながらふと思った


そう言えば…


この子、何となく誰かに似てる…

誰だ?


何だか、浮かびそうで浮かばない。



誰だろう…




2.新たなる世界で





「澪さん?」


「え?」


「着きましたよ」


「あ、はい。ありがとうございます」



庭の向こうに見える門の奥に目を凝らす。



排気ガスを吐く車、
広い空にそびえる高速ビル
ケータイばかりに視線と気を注ぐ若人。



そんな物は何処にもなく、
整備のないまっさらな地面と
高い空を主張する背丈の低い民家。
色とりどりな着物を纏った女や子供、男たち。


どこ…ここ…


「どこです、ここは」

「京だよ」

京…?


京とは150年前以上に使われていた京都の名前だ…


「今日は、何日ですか…?」

「今日?えっとね…あぁ、9月の28」

「何年?」

「文久…3年?」



突然、足の力が抜けてその場に座り込んだ


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