動乱の氷華
□非日常な朝
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翌朝。
痛む腰にむち打ち澪は目を覚ました。
青紫の空を見上げながら、
昨晩の土方との会話を思い返していた。
5.非日常な朝
昨晩───…
「近藤さん以外のそいつらを殺る。」
「土方副長。
その"暗殺"、誰がやるんです?」
着物の合わせめに指を滑らせる土方は、
己さえ気付かないうちに澪にみいっていた。
俺はまだ暗殺だなんて、
言っちゃあいないんだがな…
まあ、察しの良い女は嫌いじゃねえ。
なにより。
この俺がまるで盛りのついた餓鬼のように思わせるあの余裕さ…
壊したくなる。
「総司だ。それがどうかしたのか?」
「…そうですか。それはもう沖田さまに?」
「いや、まだだ」
「わかりました。では、土方副長。
その仕事、私の初職務としていただけませんか?」
爽やかな笑顔の澪に、土方は息を吐き出しながらも内心考えた。
確かに、こいつの品定めとしてはいいか…。
「いいだろう、実行日は追って知らせる。
だが1度でも疑わしい真似はするなよ。」
「ありがとうございます」
澪が襖をそっと開くと、
朝焼けの光が澪を照らした。
月に明かりに照らされて妖艶に映る澪をみて、土方は思わず
「澪」
と口を開いてはっとした。
しかし振り返った澪の笑顔に、
表情を緩めじゃあなと告げた。