暁下天仰

壱ノ章
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プロローグ



「鳥籠が小さくなったようですね」



光の回廊の中聞こえた柔らかな声に女は振り返った。


「誰だ、お前は」


硬い声音を突き付ける。

けれど、声を掛けてきた者は答えようともせず、ただ肩を竦めただけだった。


「誰だ、お前は。私に何の用だ」


少し離れて佇む男の顔は周囲に溢れる光ではっきりと窺い知ることが出来なかったが、朗らかな笑い声が耳を打つ。


「窮屈になるのも当然です」


男は、やはりこちらの質問には答えなかった。
辺りの眩い光も相俟って、まるで幻影と向き合ってでもいるかのような錯覚に陥る。


「貴女は小鳥などではなく、白鳥だったのですから」

かつりと靴を鳴らしてゆっくりと近付いてきた男は、静かで穏やかな声で囁く。

甘い言葉で死に誘う死神のように。


「その羽を思う存分広げてみたいとは思いませんか?
果てしない地が次なる鳥籠。……さぁ如何なさいます?」


差し出された手を女は黙って見つめた。


「…………」


その手を取ったのは、きっと必然だったのだ。










『Pure-Crime壱ノ章』

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